働き方改革の一環として導入が進められているテレワーク。オフィスへ通勤することなく仕事が出来る点はメリットもあれば課題もあります。特にリモートで仕事をする際に大きな課題となるのがマネジメントですが、オフィスで対面する環境と同じマネジメントでは対応が難しいため、課題を解決する工夫が必要になります。
今回は、テレワークのマネジメントにおける課題の解決手法や成功事例について解説します。
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目次
そもそもマネジメントとは?
まず初めにマネジメントとはそもそも一体どういった意味を持っているのでしょうか?その根本を理解する事が新たに生まれた課題を解決するために必要となります。経営学の名著「マネジメント」で広く知られているピーター・ドラッカーはその著作内でマネジメントの定義について「設定した目標に沿って組織を運営する」と表現しています。
さらに、マネジメントに求められる役割として、
- 目標の設定
- 目標の設定に沿った組織の構築と運営
- 成果の評価とフィードバック
がある、と述べています。ここから分かるようにただ組織に所属している社員の労働を管理するだけでなく、目標やそれに沿ったプロセスを成功へと導くために社員を管理する事がマネジメントにとって重要だと言えるでしょう。しかし目的は同じでも、今までの働き方と同じマネジメント方法をテレワークでも採用しては適切なマネジメントが行えません。
テレワークの最大の特徴は、ITツールを利用した遠隔でのマネジメントが中心になることです。そのため今までの対面型のマネジメントから、遠隔によるマネジメントへの対応が必要になります。
テレワークにおけるマネジメントで生まれる課題
では、テレワークでのマネジメントにはどのような課題があるのか見ていきましょう。
コミュニケーション機会の減少
テレワークでマネジメントする際の大きな課題としては、コミュニケーションが不足する点です。今までオフィスで対面できている時は、上司への報連相や同僚とのコミュニケーションが取りやすい環境でした。しかしテレワークではテレワーク環境では社員が一同に介するようなオフィス環境ではなくそれぞれが離れた場所で業務を行うため、直接顔を合わせて対面する機会そのものが失われますので、それに伴ってコミュニケーションを行う機会が失われてしまいます。
そうした機会が失われる事で、部下はちょっとした業務上の疑問や不安を伝えにくく感じたり、上司の立場にある社員は部下のモチベーションをうまく把握できていなかったりするといったシーンが見受けられています。
労務管理が難しい
今までのオフィスワークでは決まった時間に出勤し、退勤していく勤務形態。顔が見えているため残業時間を調整するよう指示すること可能でした。しかしテレワークでは自宅や遠隔地で勤務し、業務中の様子が見えないため、社員の労務管理が難しくなります。
社員側は仕事とプライベートの切り分けが難しくなり、長時間労働になりやすいことが課題です。長時間労働によりストレスが溜まり、生産性の低下につながるリスクもあります。
部下に対する評価方法が難しい
コミュニケーション不足に関連して生まれる課題としては、テレワーク環境下における部下への評価基準に対してマネジメント側が難しさを抱えてしまうといった事も起きています。数値目標などの数値化可能な定量評価によるものへの評価は、これまで通りとなりますが、勤務態度などの定性評価を行う事が難しくなり評価を下す人によって評価基準がぶれてしまうといった状況も十分考えられます。
評価が定まっていないと、人によって評価ポイントが変わり、社員側に「正当に評価されていない」と不満を抱かせかねません。そのため企業側と社員側の双方が納得できるような新しい評価基準を作成していく必要があります。
テレワークのマネジメント課題への解決策
テレワークを導入する事で生まれた課題を解決するためには、テレワークに合わせた新たな環境づくりを行う事が必要になってきます。テレワークにおけるマネジメントをスムーズに行うために必要となる環境整備の具体案やその一例を具体的に以下に説明していきます。
コミュニケーションツールの導入
コミュニケーション不足の課題は、WEB会議システムやチャットアプリなどオンライン上のコミュニケーションツール導入で解決に近づけます。ただ導入するだけではコミュニケーション不足によって生じた問題は解決できるとはいえません。必要とされているシーンや状況に応じて利用する事が大切です。
例えば、例えば全体会議だけでなく、チームやプロジェクトといったより小規模のグループを用途に応じて細かく設けることや、部下や上司とより密度の高いコミュニケーションを図るために一対一で面談を行う時間を設ける、気軽な雑談用のグループを設けて業務外における人間関係の円滑化を図る、といった仕組みを作るといった活用例があります。
ツールを導入するだけでなく、上司からの積極的なコミュニケーションを意識し、対面時と同等のコミュニケーションが取れるよう心がけましょう。
勤怠管理方法の見直しや勤怠管理ツールを導入する
厚生労働省より「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」が示され、企業は従業員に対して労働時間をより客観的かつ正確に把握する事が義務付けられるようになりました。ですがテレワークという勤務形態は企業のマネジメント側から離れた場所で社員が日々の労働にあたるため、勤務状況を正確に把握することはなかなか難しいのが現状です。そこで導入すべきツールが「勤怠管理ツール」です。
勤怠管理ツールを活用することで、インターネット環境下で働く社員に対して統一されたシステムで勤怠管理を行う事ができます。社員が自己申告を行った労働時間と勤怠管理ツールに記録されている労働時間をマネジメント側が照らし合わせる事で、客観的かつ正確な内容で従業員の労務環境を把握することに繋がります。
評価基準を定める
テレワークでも社員がモチベーションを保ちながら、生産性も上げていくためには適切な評価基準が必要です。
営業職など成果で評価ができる職種と、事務職など数値化が難しい職種など、それぞれの業務内容に合わせた目標設定が重要になります。
評価を伝える時には、なぜその評価に至ったのか、課題は何があるか、今後どう改善していくかなど詳細を話し合う機会を設けることも大切です。
テレワークのマネジメント成功事例
では、テレワークマネジメントに成功している事例を紹介していきます。
サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社のある部署ではテレワークが始まる前は、朝礼を行っていませんでした。しかし、メンバー間で一人一人が孤立しないように、毎朝20分の朝礼をテレビ会議システムZoomを使用し、実施しています。
定期的にメンバー間が話せる時間を設けることで、リモートワークによる心理的負担が軽減され、チームの一体感も増すという成果がでています。
味の素株式会社
味の素株式会社では労務管理の課題解決のため、勤怠管理システムを導入しています。社外からネットワークで接続した時刻は、勤怠管理システムに客観時刻として表示。
テレワークを利用した社員は、その時刻を参考に自身で勤怠管理システムに勤務時間を入力します。客観時刻と自身で入力した時間に30分以上差異がある場合は、その理由を上司へ申請するルール設定をしています。
日本ユニシス株式会社
日本ユニシス株式会社ではテレワークにおける評価のため、作業内容や生産性を「見える化」する仕組みを整えています。上司とテレワークを利用する社員は、それぞれの役割の作業アイテムと成果物を明確にすることで、「業務作業シート」を作成します。
シートを基に成果物の量・質をどのように評価するのかをお互いに検討し、合意することで「管理指標」を決定。管理指標に対する各月の目標値を決めて運用するようにしています。
テレワークマネジメントを成功させて、快適に働こう
新しい働き方が生まれたことによって新たな課題が生じるのは、至極自然であると言えるでしょう。そして変化が生まれた環境においても従来のマネジメント方法を運用し続けることで問題が生じるのは、やはり当然の結果です。今回の記事で紹介したように、新たな働き方には新たなマネジメント方法が必要です。
マネジメントが変化することで企業は社員に対してより柔軟な働き方を提案可能になり、そうして生まれた新たな働き方によって得られるメリットは組織に所属する社員にとってさらに大きく感じられるでしょう。テレワークを導入したは良いものの、マネジメント面で課題を感じている方はぜひ今回の記事を参考にしてみてはいかがでしょうか。