世界規模で起きている新型コロナウイルスの流行に伴い、日本政府による3度目の緊急事態宣言を発出したことを受けて、国内企業は政府が求めるより厳しい在宅勤務実施率に応えるべく、それぞれの企業が具体的な導入目標を掲げて取り組みを進めています。
ですが実際のところは、在宅勤務導入が適わない業種である、決算などの社内の繁忙期と重なり実現が難しいなどといったケースも少なくありません。今回の記事では在宅勤務・テレワークを実施している企業が実際に現場で感じている課題や、在宅勤務継続が発表されている企業例について詳しく紹介していきます。
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目次
「完全在宅勤務」に生じる難しさ
とりわけ在宅勤務の中でも、全くオフィスに出勤しない「完全在宅勤務」については難色を示している企業が多く見受けられます。そうした企業はどういった点において難しさを感じているのか、具体的な例を挙げて説明します。
新入社員への教育、OJT
在宅勤務・テレワークを実施している企業が感じる難しさに、今年度採用した新卒入社社員に対する教育やOJTを行いにくいといった例があります。株式会社学情が実施した「2021年4月入社の新入社員の勤務形態」に関するアンケートによると、在宅勤務・テレワークを実施している企業のうち81.8%は「新入社員に対して定期的に出社の機会を設ける」としている事が分かりました。
その理由としては、
- 会社に対する帰属意識の醸成
- 新生活に対する不安解消のため
- テレワークでは補いきれない業務のOJT
- 仕事に対するモチベーションや理解度の把握
- 対面によるコミュニケーション不足
こういった意見が多く挙がっているようです。
共通する認識としては、マネジメント側が新入社員に対してフォローやコミュニケーションにおける面で課題を感じているといった事が見て取れます。
繁忙期における勤務
企業の規模に関わらず在宅勤務に限界を感じる例として、在宅勤務導入が難しくなる場合が生まれるのが繁忙期における業務です。例えば金融機関の決算期では、個人情報や顧客企業の業績に関わるような社外秘のデータは当然ながら社外に持ち出す事は叶いません。
その為、セキュリティ対策を万全に行なったとしても情報流出の可能性が少しでもある場合は在宅勤務の実施が難しくなってきます。
業種・業界の風土的に導入が難しい
製造業や物流に関わる業種など、そもそも在宅勤務という働き方そのものが、業種的に導入が難しい場合も考えられます。或る鉄道事業関連の企業は公共企業を担っている性質上、現場のみならずオフィスにおいても出社削減率は設定ができず、会社全体での7割削減は実現が難しい、と答えています。
また、業界の風土的に在宅勤務に対して抵抗が強い、企業姿勢として消極的で実施しにくいといった声も挙がっています。在宅勤務可能な業種であっても、企業が組織として在宅勤務継続も明示しておらず、統率が取れていないことから上司や同僚の出社により同調圧力が生まれてしまい結果として不要な出社が増加している可能性も鑑みられています。
在宅勤務継続が発表されている企業
こういった在宅勤務に対する難しさを抱える企業がある一方で、緊急事態宣言解除後においても在宅勤務もしくはテレワークを継続することを既に発表している企業も数多く見受けられています。早速、以下にその一例を紹介していきます。
日立製作所
日立製作所では2016年より働き方改革を独自に推進しており、この度の緊急事態宣言発出を受けて社員が幅広い職務において在宅勤務活用を標準とした働き方を実現するべくビジネスシーンにおける新常態への転換を加速していく旨を、プレスリリースを通じ2020年5月26日に発表しています。
発表されているロードマップによると、2020年5月から9月にかけて課題の洗い出しから環境整備、個人の職務に応じた中長期的な勤務形態の検討を図り、2020年10月から試行開始、各種手当てや福利厚生制度の見直し、そして2021年4月から在宅勤務活用を標準とした働き方を正式適用するとしています。
富士通
富士通グループは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて2020年5月25日の緊急事態宣言解除後も「在宅勤務やテレワーク勤務を基本とし、必要最低限の出社にとどめる」「一挙にオフィス業務を再開するのではなく、段階的に再開するとともに出勤率を最大25%程度にコントロールする」といった基本方針を発表しています。
NTT
NTTは2020年6月以降に関しても、在宅勤務実施率を5割以上にする方針を発表しました。国内NTTグループ各社で働く約18万人のうち、在宅勤務可能な総務や経理といったオフィス部門に勤務する社員を対象者としています。
まとめ
新型コロナウイルスの感染が猛威を振るったことで全世界的にビジネスシーンの流れが大きく変わった事を受け、日本国内企業は転換期の岐路に立っているといえるでしょう。新たな働き方が生まれる事で、当然企業やそこで働く社員には新たな課題が生まれます。
しかし、ここでどう舵を切って行くかがまさに今後の企業の存続そのものに関わっているといっても過言では無いでしょう。今回の記事をぜひ今後の働き方やマネジメントの場面で役立てて頂けたらと思います。