近年、IT(情報技術)の進展に伴い、情報通信に必要なネットワーク環境の発展が急速に進んだことで、大容量のデータをやり取りする必要がある建設生産活動の現場にも、IT技術を活用可能な機会に恵まれることが多くなってきました。
特に建設における施工段階の現場では大容量の情報データを多く扱っており、例を挙げると設計図、施工図、仕様書、現場写真といったものがあります。加えてこういった案件には関係者が多く、施主、設計者、施工会社社員、協力会社社員などがそれにあたります。
このように多くの関係者がいる点を考えた際に、情報共有にITによるシステムを活用した情報共有は時間、コスト、クオリティを維持するにあたり大変効果的といえます。今回の記事では情報共有システムについての基本的な知識や、導入によって得られるメリットについて詳しく解説していきます。
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目次
情報共有システムとは
情報共有システムとは、公共工事における受注者・発注者間のやり取りや工事に必要な関連書類の作成や共有を、ウェブを通じてオンライン上で行う方式を指しています。情報共有システムは主に
- 共有サーバーによる情報共有
- 外部サービス(ASP)による情報共有
といった方式がそれぞれ存在しています。
情報共有システムに用いられるASP方式
情報共有システムには先述した共有サーバーを自前で設置する場合と、ASP(Application Service Providerネットを利用し業務用ソフトを月額料金な度により提供するサービス)により情報共有を行う場合があります。インターネット環境さえ整備されていれば情報共有システムをウェブ上にクラウド方式を用いて設置ができ、データのバックアップやセキュリティ対策はASPを提供する事業者によって行われるため利用開始のハードルが低いことが魅力です。
導入によって得られるメリット
情報共有システムを導入することで、利用する企業や事業者はどのようなメリットが得られるのでしょうか?主に考えられる具体的な点を以下に挙げていきます。
①直接対面でやり取りする必要が無くなる
業務上発生する書類のやり取りをweb上で行えるため、各関係者が都度対面でやり取りを行うことや双方の事業所に訪問するといった際に生まれる移動時間の削減、データ上で発議・回覧なども可能なため印刷物の削減にも繋がります。システム上のワークフローでは現在書類がどの段階で止まっているのかといった申請状況を随時確認することができます
②大容量に及ぶファイルも共有可能
従来における関係者間のやり取りはメールやFAXが用いられていましたが、メールにおいては特に地方自治体に対する送受信容量制限が大きなネックとなっていました。図面やデータを格納した媒体をただ送るだけでも、余計な時間とコストが生まれていたのです。
しかし、前述した通り、特に建築に関わる現場においては大容量に及ぶデータのやり取りは必要不可欠です。そうした際にも情報共有システムを活用することでサーバー上にデータをアップロード・ダウンロードするだけでやり取りを行えるため、従来に比べてスムーズな情報共有を図ることが出来るようになります。
また、簡単にデータを共有できる事は最新のデータを関係者間で正確に把握することに繋がり、間違った情報共有によって起きていや手戻りや手直しといったヒューマンエラーの防止、削減にも有効といえます。
③検査に必要な準備作業の工数削減
建設生産活動の現場では工事打ち合わせ簿、業務用打ち合わせ簿、段階確認簿、履行報告書、立会・確認願といった各工程に必要な書類の作成から共有までの全てをウェブ上で完結することができます。また、各書類が所定のフォルダへアップロードされるのと同時に各関係者に対してメールで通知を行う機能もあります。
この通知機能を使うとメールに自動的に所定のファイルにアクセスするために生成されたURLが記載され、そのアドレスを選択することで登録されたファイルにアクセスが可能になります。従来メールのみで共有を行っていた際に生じていた文面の作成、送信先関係者の選定に掛かる時間的コストや工数を削減し、迅速かつ正確な情報共有や案件進行を叶えられる形となります。
④電子納品についても対応可能に
ASPシステム運用によって、各関係者が決済を終えた書類や工事帳票を電子納品形式でダウンロードすることが可能になります。また、ASPのシステムごとにパソコン本体へダウンロードもできます。従来は全ての必要書類を紙面で行っていたため、担当者は検査前日に協議書の目次作成や全ての添付資料が揃っているかのダブルチェックなど、多くの業務に追われている事が常でしたので、電子納品が可能となる事で大幅な工数削減を叶える形になります。
まとめ
その他にも、各関係者が同じ環境でやり取り可能な掲示板機能、月間・週間工程や監督員担当日の予定を一元管理可能なスケジュール機能、ウェブ会議機能などがASPの付帯機能として備わっているものもあり建築生産活動に関わるほぼ全ての業務を一手に担えるシステムとして運用するのに十分といえるでしょう。
こうした新たなシステムの需要や採用する企業は、今後さらに増加していくと思われます。情報共有システム運用を生産性の向上に繋げるためには、利用者の情報リテラシー向上や各システムのデータ連携が課題となります。ぜひ今回の記事を参考に、情報共有システムの仕組みやメリットについての理解を深める際に役立てててください。